南鳥島×グリーンランド:中国の資源包囲網を破る『二つの門』

iPhoneを手に取る。電気自動車に乗る。巡航ミサイルが標的を正確に捉える——これらすべてに共通するものがある。レアアースだ。ネオジム、ジスプロシウム、テルビウム。聞き慣れない名前の金属が、現代文明の生活の土台を支えている。

さて問題は、その供給の9割以上を中国が握っていることだ。 中国は採掘現場を押さえているだけではない。精製工程や加工技術、そして最終製品に至るまで、サプライチェーン全体を統合している。この垂直式の支配に、西側はまともな対抗策を持てずにいた。

ところが今、地球の両端で状況が動いている。太平洋の孤島・南鳥島と、北極圏のグリーンランド。この二つの場所で進む資源開発が、中国支配への挑戦になろうとしている。ただし、話はそう単純ではない。

武器としての資源管理

2010年9月、尖閣沖で海保の巡視船と中国漁船が尖閣諸島付近で衝突した。思い出すのも忌まわしい、あの事件だ。日本は中国籍の漁船を操縦していた船長を逮捕拘留した。中国政府は「尖閣諸島は中国固有の領土」という主張を根拠に、北京駐在の大使を呼び出し、日本側の主権に基づく司法措置に強硬に抗議し、船長と船員の即時釈放を要求した。これを受けて、日本政府は船員の帰還と漁船の返還を決定したが、船長に関しては国内法に基づき起訴する方針を固めた。すると中国側はこれに強く反発し即座に日本に対して様々な報復措置を実施した。そして、中国からのレアアース出荷が止まった。公式発表はなかった。通関が「遅れる」だけだった。日本の政府関係者や製造業者は真っ青になった。

これが中国のやり方だ。露骨な禁輸ではなく、「管理強化」という形をとる。2024年以降、この手法は加速している。ガリウム、ゲルマニウム、グラファイトときて、2025年4月には、EVモーターや風力発電・レーザー・航空機部品など先端技術に不可欠で、中国への依存度が高い品目の、重希土7種類に輸出許可制が導入された。表向きの理由は「資源保護」。だが誰もが知っている。米国の半導体規制への報復だ。

この問題が厄介なのは、中国が鉱石を掘っているだけではない点だ。レアアースは採掘後、複雑な化学処理で純度を上げなければ使えない。科学処理を行う精錬に伴い、環境汚染を避ける事は出来ない。レアアースの多くは、トリウム232やウラン同位体などの放射性物質を含有しており、その採掘や製錬の過程で放射性廃棄物が大量に発生する。中国以外の国で、レアアースの精製処理が進まない理由がここにある。この精製技術と設備で、中国は他国を圧倒している。つまり、仮にオーストラリアやアフリカで鉱山を開発しても、精製は結局中国に頼ることになる。

支配は川上だけでなく、川下にも及んでいる。

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